診療・介護報酬債権ファクタリング

診療・介護報酬債権ファクタリングとは、医療機関や介護事業者が公的保険制度に基づいて提供したサービスに対して、保険者(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会、市町村など)から受け取る報酬債権を、ファクタリング会社が買い取ることで資金化する資金調達手法です。

診療報酬や介護報酬の支払いには通常1〜2か月のタイムラグがあるため、資金繰りの改善を目的としてこのファクタリングサービスを導入する医療・介護事業者が増えています。

この仕組みでは、事業者が保険者に対して有する債権をファクタリング会社へ譲渡し、報酬の早期受け取りを可能にします。公的保険制度に基づく債権であるため、回収リスクが低く、安定した資金調達手段として注目されています。

取引の流れ(診療・介護共通)


  1. 医療機関または介護事業者とファクタリング会社が債権譲渡契約を締結します。
  2. ファクタリング会社が保険者(社保・国保・市町村等)に対して債権譲渡通知を行います。
  3. 債権額に対して70〜80%程度の掛目で買取が行われ、手数料を差し引いた金額が事業者に支払われます。
  4. 医療機関は診療報酬請求(レセプト)、介護事業者は介護給付費請求書を保険者に提出します。
  5. 保険者は請求内容を審査し、不正請求の有無などを確認します。
  6. 審査に問題がなければ、報酬がファクタリング会社に直接支払われます。
  7. ファクタリング会社は、買取対象外だった残額を事業者に支払います。

サービスの仕組みと特徴


従来のファクタリングは、企業間取引における売掛債権が対象でしたが、診療・介護報酬債権ファクタリングは、医療機関(病院、クリニック、歯科医院、調剤薬局)や介護事業者(訪問介護、通所介護、施設介護など)が保険者に対して有する公的報酬債権を対象としています。

日本の公的医療制度では、患者は医療費の一部(通常3割)を自己負担し、残りは健康保険(社保・国保)が負担します。医療機関はこの保険負担分(診療報酬)を後日請求しますが、支払いまでに2か月程度の遅延が生じるため、資金繰りに課題を抱えるケースも少なくありません。

介護保険制度においても、利用者負担分を除いた介護報酬は、事業者が国保連合会や市町村に請求し、審査を経て支払われます。こちらも支払いまでに一定の期間を要するため、同様の資金繰り課題が存在します。

診療・介護報酬債権ファクタリングでは、債権譲渡通知を保険者に行うことで、報酬の支払いがファクタリング会社に直接行われる仕組みとなります。これは、企業間取引における「3者間ファクタリング」の医療・介護版と位置づけられます。

企業間取引では、債権譲渡通知が取引関係に影響を及ぼす可能性がありますが、医療・介護分野では保険者が公的機関であるため、通知によって取引が停止されることはありません。そのため、事業者にとってのリスクは極めて低く、安心して利用できるファクタリング手法といえます。